

生産技術と製造技術は、どちらも生産効率に関連する業務です。しかし業務内容は曖昧なところも多く、企業によって解釈が異なります。
そのため勤務先によってそれぞれの定義には多少の違いが生じる可能性もありますが、一般的に生産技術と製造技術それぞれの業務内容の特徴は次のとおりです。
生産技術(Production Engineering):量産を成立させるための「仕組み・工程・設備」を設計し、立ち上げる役割。設計と工場の橋渡し。
製造技術(Manufacturing Engineering):稼働中のラインを「安定化・最適化」し、日々の不具合を潰し続ける役割。現場の継続的改善の要。
具体的な業務
生産技術
- 製品のDFM/DFMAレビュー、タクト・能力計算、ラインバランシング
- 工程設計(加工順序・搬送・在庫点)、レイアウト設計(人・設備・AGV)
- 設備仕様書作成/ベンダ選定、治工具・検査治具設計
- 品質作り込み:PFMEA、QC工程表、管理特性/計測方法設計、MSA
- 標準時間設定(MTM/MOST)、作業票・動画標準化、教育計画
- 立上げ試作~量産移管(R@R、PPAP、CS/客先承認対応)
製造技術
- 立上げ後の条件最適化(温度・圧力・プログラム・ティーチング)
- SPC/傾向監視、異常検知、トラブル再発防止(8D/A3、QRQC)
- 歩留り改善(パレート→真因解析→DOE/タグチ最適化)
- 段取り替え短縮(SMED)、自動化率向上、小改造・改良治具
- TPM/予防保全・予知保全、MTBF/MTTR改善、消耗品LCC最適化
- 変更管理(ECN/ECR)、作業標準の改訂・教育、現場安全改善
成果物(アウトプット例)
- 生産技術:工程設計書、レイアウト図、設備URS/図面、治具図、PFMEA、QC工程表、検査基準書、標準作業票、能力試験記録、コスト試算、立上げ完了報告
- 製造技術:条件表、SPC管理図、異常解析レポート、8D/A3、SMEDシート、保全基準書/点検表、改造仕様書、教育履歴、日次/週次の改善KPIダッシュボード
KPI(現実的に追う指標)
- 生産技術:
- 量産開始オンタイム率、R@R/PPAP一発合格率
- 初期歩留り/初期不良PPM、初期OEE、タクト達成率
- 投資対効果(ROI/回収期間)、初期原価差(目標比)
- 製造技術:
- OEE(稼働・性能・品質)、MTBF/MTTR
- 直行率/歩留り、不良PPM、スクラップ率
- 段取り時間、サイクルタイム、エネルギー/個
- 異常再発率、8Dクローズリードタイム
求められるスキルはほぼ同じ
一般的な生産技術の求人では業務内容の都合上、機械・化学・工学などを専攻していた人材が喜ばれやすく、製造技術では設備の専門知識が求められます。しかし、以下のように求められるスキルはほとんど共通します。
・コミュニケーション能力
・マネジメント能力
・問題解決力
・意欲や好奇心
一般的には、生産技術も製造技術も同じ「工場全体と連携して業務効率の改善を目指す仕事」です。そのため、周りときめ細やかなコミュニケーションを取りながら、自分の頭で考えて解決策を見いだせる人材ほど生産技術や製造技術の現場で活躍することができるでしょう